東海道・箱根八里が「日本遺産」に認定。……ところで日本遺産って?

東海道・箱根八里が「日本遺産」に認定

先ごろ、平成30年度認定の「日本遺産」が発表されました。全国76件の申請の中から13件が新たな「日本遺産」として追加認定された中に、東海道の小田原~三島間の箱根峠越えの道「旅人たちの足跡残る悠久の石畳道—箱根八里で辿る遥かな江戸の旅路─(神奈川県小田原市・箱根町・静岡県函南町・三島市)があります。

箱根八里とは、東海道9番目の宿場小田原宿(神奈川県小田原市)から「入り鉄砲に出女」で知られる箱根の関所のあった箱根宿(箱根町)を経て「天下の険」と言われた箱根峠を越え、11番目の三島宿(静岡県三島市)に至る約30kmの道筋。ヘアピンカーブの続く国道を縫うようにして残る石畳の旧道(もちろん坂道)を、ほぼ丸1~2日かけて歩く、東海道最大の名所にして難所と言った区間です。

杉の木立に囲まれた、箱根八里の道筋

 

東海道500kmを踏破された方には、思い出の場所として(良い思い出も大変な思い出も)挙げられる方も多いかと思いますが、街道歩き界では、「東海道を気軽に散歩感覚で歩き始めた人も、箱根を越えると京都まで歩くことを意識し始める」と言われるひとつのターニングポイント。
古くからの難所を越えて長い静岡県に突入するこの場所は、精神的にも大きな転機となりますが、特に関東圏に住んでいる人からすると「ここから先に進むと日帰りのお散歩ではちょっとキツイくなるぞ」というわけで、物理的にもその先を歩き続けるかどうかの決断を迫られる場所でもありますね。

最高地点の箱根峠は標高846m。神奈川県と静岡県の県境です

 

そんな「我らが箱根八里」が新たに追加された「日本遺産」ですが、はて、「世界遺産」じゃなくて「文化財」でもなくて「日本遺産」とは??と思われた方もいらっしゃるのでは。

 

2015年に誕生。新たな観光資源発信方法としての「日本遺産(Japan Heritage)」

「日本遺産(Japan Heritage)」は、文化庁が2015年に立ち上げた文化財や地域の歴史による観光資源発見・発信のための制度です。自治体からの申請を受けて文化庁が認定するもので、現在、平成30年度新たに追加されたものを含め全国で67件が登録されています。

 

混同しそうな(?)ものに、「世界遺産」や「文化財」があります。

世界遺産……1972年にユネスコ総会で採択された「世界遺産条約」に基づき、「人類共通の遺産」を登録するもの。文化遺産・自然遺産・複合遺産があり、日本ユネスコ連盟のサイトによると、2016年12月時点では世界で1052件が登録済。

文化財……文化財保護法・条例により国や地方公共団体が指定する、文化的、歴史的価値のあるモノ・コト。有形文化財・無形文化財・民俗文化財・記念物・文化的景観・伝統的建造物群があります。

このふたつが歴史・文化資源の価値づけや保護を目的とするものであることに対して、「日本遺産」は地域のブランド化や観光資源としてのPRを目的とするもので、文化財のように各地に点在するモノを個々に指定するのではなく、広域にまたがる文化財を「ストーリー」として繋ぎ「面」として扱うことが特徴です。

自治体の垣根を超えるものとしても期待され、都道府県や市町村をまたがって認定されている地域も少なくありません。もっとも広域に渡るものとしては、「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~ 」の北海道・青森県・秋田県・山形県・新潟県・富山県・石川県・福井県・京都府・大阪府・兵庫県・鳥取県・島根県・岡山県・広島県などがあります。

旧街道を歩いていると文化財に出会うことが多くありますが、それぞれはたいてい個別に指定された、年代も目的もバラバラのもの。(伝統的建造物群保存地区は、宿場や旧街道の道筋を丸ごと指定していることもありますが)
その一方で、今回「箱根八里」の約30kmの道筋が認定されたことからも判断できるように、歴史的な物語や存在意義を「面」としてとらえるこの日本遺産は、街道歩きとはとても相性が良さそうに感じられます。

 

「日本遺産」に登録された街道

実際のところ、これまでに登録されている67件の日本遺産の中で、街道に関連のあるものは少なくありません。

これまでに認定された「日本遺産」一覧は、こちらをご覧ください。

各「日本遺産」の詳細参照には、日本遺産ポータルサイトが便利です。

 

街道そのものが認定されているものとしては、今回認定された箱根八里のほかに以下のような「ストーリー」があります。

1400年に渡る悠久の歴史を伝える「最古の国道」~竹内街道・横大路(大道)~(竹内街道)

海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群~御食国(みけつくに)若狭と鯖街道~(若狭街道)

木曽路はすべて山の中~山を守り 山に生きる~(中山道)

 

そのほかにも、歴史と人の往来は、切っても切り離せない関係にあるもの。

近江八幡(中山道)の水郷や五箇荘(中山道・御代参街道)の街並みが入っている「琵琶湖とその水辺景観-祈りと暮らしの水遺産」や、出羽三山の参詣道と六十里越街道の入る「自然と信仰が息づく『生まれかわりの旅』~樹齢300年を超える杉並木につつまれた2,446段の石段から始まる出羽三山~」、成田街道の入る「北総四都市江戸紀行・江戸を感じる北総の町並み~佐倉・成田・佐原・銚子:百万都市江戸を支えた江戸近郊の四つの代表的町並み群~」、大山街道の「江戸庶民の信仰と行楽の地~巨大な木太刀を担いで「大山詣り」~」、鳥取の方の大山に向かう街道「地蔵信仰が育んだ日本最大の大山牛馬市」など、日本遺産の多くには旧街道が含まれています。

「自然と信仰が息づく『生まれかわりの旅』」(山形県)の羽黒山

 

江戸庶民の信仰と行楽の地~巨大な木太刀を担いで「大山詣り」(神奈川県)~の大山山頂

 

コンプリートを目的として「日本遺産」めぐりを楽しむのも良いですし、これから至る場所への予習や歩いた場所の復習として、この「日本遺産」のストーリーを参考にされるのも良さそうです。
街道を歩いた人々が何を考え、何を目的として移動したのかを考えるきっかけとして、「日本遺跡」をめぐる旅はいかがでしょうか?

まだ案内も少なくややマイナーな印象がありますが、これから「ストーリー」が増えていって知られてくれば、ここから街道歩きに興味を持つ人もいるかもしれないと期待しています。

 

東海道・箱根八里を歩くなら

今回「日本遺産」に認定された小田原~三島の区間を歩いてみるのに最適な地図、風人社「ホントに歩く東海道」は、箱根八里の日本遺産認定を記念して6月末までセール中です。通して歩く方はもちろん、この区間だけちょっと歩いてみようかなという方にもおすすめ!
旧道の道筋がはっきり分かり、そのうえ地形図で距離や高低差が正しく把握できるのに加え、道沿いの見どころ・観光情報も漏れなく掲載されています。

 

今回の「日本遺産」では、小田原城やういろう、かまぼこ通りなど小田原宿の見どころからコースに入っていますが、長距離の歩きに自信のない方は箱根湯本駅まで電車で行くことも可能です。
道そのものも素敵な石畳ですが、名産品の寄木細工工房や、江戸時代から営業を続ける甘酒茶屋、芦ノ湖や箱根神社、関所など周辺観光もお楽しみください。

甘酒で一服休憩をどうぞ

 

芦ノ湖周辺にも見どころがたくさんあります

 

箱根越えはちょっと骨の折れる登山旅となりますが、石畳や舗装路として整備されていてバス路線も並走していますので、本格的な登山ほどの装備は必要ありません。
登山靴が必要かどうかは好みの分かれるところですが、石畳の斜面を歩くので、念のためくるぶしまでを保護する登山靴が安心です。特にこの季節、雨の日や雨上がりは石畳が濡れて滑りやすいのでご注意ください。

箱根宿周辺は宿泊施設や観光施設が多くありますが、営業終了が早いので、箱根宿(芦ノ湖周辺)で一泊される方はあらかじめ宿の予約をされていくことをお勧めします。(飲食店もありますが、夕方6時以降はほとんど営業していません。)
また、箱根関所周辺からバスで小田原、三島に行くこともできます。

 

箱根越えはもちろん、これからの街道歩きの旅に、「日本遺産」を意識してみてはいかがでしょうか。

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